作る少年、食う男(2) 執事の受難と旦那様の秘密 上

並外れた長身に銀髪、凍てついた北の海を思わせる暗青色の瞳――。大国アングレ第四の都市・マーキスの検死官を務めるウィルフレッドは、マーキスでは珍しい風貌と検死官という職業から、いつしか“北の死神”と呼ばれるようになっていた。そんな“北の死神”の助手兼恋人は、マーキスでは見かけない艶やかな黒髪と、黒曜石のように輝く瞳を持っていることから、やがて人々は“死神のカラス”と呼ぶように……。生まれた場所も親もわからず、マーキスの孤児院“ネイディーンの家”で育ったハルは、孤児院を出て男娼として暮らしていた時にウィルフレッドと出会い、彼の屋敷で暮らすようになったの。「ほかの誰でもない、お前が大切で愛おしいのだ」。ことあるごとに、そう伝えてくれるウィルフレッドの存在に、ハルは幸せを噛みしめ、穏やかな気持ちで日々を過ごしていた……。だがある日、ハルが育ったネイディーンの家の院長が何者かに殺されてしまう。事件の容疑者として逮捕されたのは、なんとウィルフレッドの信望厚き執事・フライトだった――!!事件について、口を閉ざしたままのフライト。真相を解き明かそうにも手がかりがなく、困惑するハルに、彼はあるメッセージを伝える。「旦那様のグレーのジャケットは、まだ手入れをしていないからお召しにならないように」――。その言伝に隠された本当のメッセージとは!?ウィルフレッドとハル、そしてフライトの恋人・キアランも加勢し、フライトを救い出すために事件の解明に乗り出す――!!